電波をデジタル方式で発信する「デジタル無線機」を紹介。電波法改正によるアナログ無線機の廃止により、デジタル無線機やIP無線などの他の手段への移行を検討する必要がある企業も多いことでしょう。今回の記事ではデジタル無線機とアナログ無線機やIP無線機との違いや、あらたな選択肢として注目の「スマホインカム」について、解説します。
デジタル無線機とは
「デジタル無線機」とは、電波をデジタルで発信する無線機のこと。2008年(平成20年)に総務省によって簡易無線のデジタル化が推進され、2000年代後半以降にデジタル無線機が登場・普及するまでは、免許を持つ人しか利用できない「アナログ無線機」しかありませんでした。
デジタル無線機の登場によって無線機の利用シーンが大きく広がったわけですが、そもそも「無線機」とはいったいなんなのか、まずはそこからみていきましょう。
そもそも「無線機」とはなんなのか
「無線機(むせんき)」とは、無線通信を行うための機器のことです。「無線通信」は、主に電波を利用して行う電気通信のことで、ケーブルを用いない通信方法を指します。
無線通信の用途としては、次のようなものがあります。
- ラジオ放送
- テレビ放送
- 携帯電話
- PHS
- 無線LAN
- Wi-Fi
- Bluetooth
- 業務無線
- アマチュア無線
そして無線通信を扱う無線機は、機能によって次のように分類されます。
- 受信機
- 送信機
- トランシーバー
このうち一般的に最も馴染みが深い「トランシーバー」は、受信機と送信機が一体となったものです。受信機は電波法において「受信のみを目的とするものは含まない」と定義されており、テレビやラジオは含みません。
デジタル受信機の登場
電波は有限な資源であり、限られた資源である周波数帯をテレビやラジオ、携帯電話、業務無線、Wi-Fi、Bluetoothなどに割り当てて使用しています。国内の周波数帯はすでに多くの通信に割り振られており、これ以上新たに周波数帯を確保することが難しい状況にありました。
このような社会背景があり、電波を有効活用する必要に迫られます。
デジタル無線機は、通信で占有する周波数帯幅が少なく、アナログ無線機と比べて電波を有効に使えます。そのため総務省による簡易無線のデジタル化の推進が始まり、デジタル無線機の導入、移行がスタート。それから時間を経て、デジタル無線機の普及が進んできました。
デジタル無線機のメリット・デメリット
アナログ無線機と比較したとき、デジタル無線機には次のようなメリットがあります。
雑音のないクリアな音声
デジタル無線機はアナログ無線機とくらべてノイズの混入が少なく、クリアな音声を送受信できます。
長距離の通信に適している
デジタル無線機は電波の特性上、直進性に優れています。そのため、長距離の通信に適しています。ただし、実際に使ってみると「アナログのほうが通信距離が長く感じる」という意見もあり、一概にそういえない部分もあるようです。
傍受のリスクが低い
アナログ無線機は、決められた周波数帯域の電波に乗せて発信するので、混信したり、その周波数を知られてしまうと傍受されてしまう可能性があります。その点、デジタル無線機は「秘話モード」や「ユーザーコード」を利用することによって、傍受されるのを高いレベルで防ぐことができます。
一方、デジタルに限らず、無線機のデメリットとしてあげられるのが「重さ」です。
デジタル無線機は高出力の電波を飛ばすため、どうしてもスマートフォンと比べると重くなりがちです。スマートフォンが200g前後であるのに対して無線機は250g前後あるものが多く、比べるとどうしても重く感じてしまうでしょう。
デジタル無線機とアナログ無線機の違い
それまでのアナログ無線機に替わり、2008年(平成20年)より推進されてきたデジタル無線機。アナログ無線機から移行し、デジタル無線機の購入を検討する企業も多いことでしょう。では、デジタル無線機とアナログ無線機にはどのような違いがあるのでしょうか。まず見た目で判断するのは難しいです。
電波の処理方法の違いと届く距離
電波を飛ばすには「変調」という処理が必要となります。アナログ無線機は音をまとめて変調してそのまま飛ばしますが、デジタル無線機は音を「0」と「1」のデジタルデータに圧縮して飛ばします。
デジタル無線機はまっすぐ直線的に電波が飛ぶので、アナログ無線機より遠くに電波を飛ばすことができます。ただし、障害物があるエリアでは、アナログ無線機のほうが電気が届きやすい場合があります。
音質に関して、デジタル無線機はノイズをカットして伝送するため、アナログ無線よりもクリアな音声で通話が可能です。
バッテリーの持ちは、アナログ無線機のほうが作りがシンプルなため、デジタル無線機よりもアナログ無線機のほうが長持ちします。
秘匿性
アナログ無線機には情報漏洩のリスクがあります。デジタル無線機は第三者が同じチャンネルを使用中も、内容が漏れないようにするコードを設定できるため、通信の秘匿性が高くなります。
このようにデジタル無線機とアナログ無線機には多くの違いがありますが、おさえておかなくてはならない情報として、アナログ無線機の使用期限があります。
アナログ無線機は今後使用できなくなる
アナログ無線機は、2024年(令和6年)12月1日以降は使用できなくなります。
現在、日本では電波の有効利用を促進するためにアナログ無線機からデジタル無線機への切り替えが促進されており、移行期間が2024年(令和6年)11月30日までと定められているのです。
この期限以降にアナログ無線機から電波を発した場合、電波法違反として1年以下の懲役刑または100万円以下の罰金の罰則を受ける可能性があります。
そのため、現在もアナログ無線機を使用している場合は、無線の廃止手続きを進めるか、期限までにデジタル無線機へ買い替えるといった対応を考える必要があるでしょう。
デジタル無線機とIP無線機の違い
今後、アナログ無線機が使えなくなることで、切り替えの候補としてデジタル無線機とともに注目されているのが「IP無線機」です。業務用で使用されている企業さまも多いのではないでしょうか。
IP無線機は、携帯電話のデータ回線を使って通信を行う無線機です。「IP」とは「インターネット・プロトコル(Internet Protocol)」の略称です。デジタル無線機とIP無線機には次のような違いがあります。
IP無線機は通信範囲が広い
IP無線機は携帯電話と同じインターネット回線を利用して通信を行います。
従来の無線機の製品は電波の届く距離での通話しかできませんでしたが、IP無線機はインターネットがつながる場所であれば通信が可能となり、アナログ無線機やデジタル無線機とくらべて広範囲で通信が可能になります。
IP無線機は免許、資格がいらない
アナログ無線機からデジタル無線機に移行する場合、管轄の総合通信局に申請が必要となります。アナログ無線機やデジタル無線機は、使用する際に免許や資格が必要となるケースがありますが、IP無線機は免許も資格も必要なく、誰にでもすぐ使うことができます。
IP無線機はデジタル無線機よりも軽い
アナログ無線機、デジタル無線機はともに機器が大きく、重いのがネックでした。その点、IP無線機は軽量で、使いやすいのがメリットです。また、スマートフォンアプリ型であれば、スマートフォンで利用することができます。
このように、IP無線機はデジタル無線機よりもメリットが多いのですが、デメリットがないわけではありません。
IP無線機のデメリット①:毎月のコストがかかる
IP無線機は機器の中にSIMカードが入っており、キャリアのインフラを利用して通信を行います。そのため、IP無線機を利用する場合は毎月の利用料を支払う必要があります。
IP無線機のデメリット②:通信障害がおこる可能性がある
頻繁におこるわけではありませんが、キャリアで通信障害がおこるとIP無線機の通信にも影響が出ます。地震や台風、水害などの大規模な自然災害がおこると、アクセスが集中して通信が不安定になる可能性もあります。
IP無線機のデメリット③:一部のエリアでは通信できない
IP無線機はスマートフォンが使える場所ならどこでも通話ができますが、逆に言えばスマートフォンが使えない場所では通話ができません。キャリアによってつながりにくい場所は違いますが、地下や山中、海上などでは通信できないということがありえます。
デジタル無線機もIP無線機もそれぞれのメリット・デメリットがあり、アナログ無線機からの移行を考えていても、正直なところどちらも微妙といったところでしょう。ならばこのままアナログ無線機を使い続けていてもいいのかというと、そうもいかない事情があるのです。
電波改正法に伴い移行が必須?
先述したように、2008年(平成20年)の電波法関連法令の改正を受け、2024年(令和6年)12月以降、一部のアナログ簡易無線機が使用できなくなります。そのため、アナログ無線機を使用している場合、期限までにアナログ無線機の撤廃や総合通信局への変更・廃止、使用する機器の移行などの措置を検討しなければなりません。
電波は有限の資源であり、今後逼迫するのが予想されることから、アナログ方式にくらべてより効率的に電波を利用できるデジタル方式が推進されるようになりました。これにともなってアナログ無線機が廃止となるのです。
今後使用できなくなるのは、周波数が350MHz帯および400MHz帯のアナログ無線機です。この周波数帯の無線機は、廃止手続きに加えて、無線機本体のアナログ方式の機能部分の改修および設定変更を行う必要があります。150MHzのアナログ無線機は今後も継続して使用可能となります。
当初は2022年(令和4年)11月30日までをアナログ無線局の使用期限としていましたが、2024年(令和6年)11月30日までに改正されました。2021年(令和3年)9月1日以降はアナログ無線機の免許は再免許の取得に限られ、新規での取得はすでにできなくなっています。
アナログとデジタルの両方の電波を使用できるデュアル方式の無線機については、アナログ方式の周波数を使用できないように改修する必要があります。
また、アナログ無線機からデジタル無線機に移行する際は、免許局と登録局の変更が必要になる場合があります。企業が業務に用いる場合は免許局に、レンタル等で第三者へ使用を提供する場合は登録局へ登録を行いますが、それぞれの局で登録できる周波数帯が異なります。
デジタル無線機の後継機はスマホインカム
これまで広く使用されてきたアナログ無線機ですが、電波法の改正に伴い、今後廃止されます。これをきっかけにデジタル無線機やIP無線機への移行を検討し、機器を探す企業も多いことでしょう。しかし、デジタル無線機もIP無線機もそれぞれメリット・デメリットがあって一長一短。そこで後継機を選ぶにあたって担当の方に注目したいのが、スマートフォンを活用した「スマホインカム」です。
「インカム(インターコミュニケーション)」とは、ヘッドホンとマイクが一体化した無線機器で「インターカム」とも呼ばれます。携帯電話は1対1のやりとりが基本ですが、インカムは1対多のやりとりができるため、イベントや工事現場等、様々な場面で活用されてきました。
スマホインカムは専用アプリをスマートフォンにインストールするだけなので、導入が非常に簡単。スマートフォンを無線機のように使用できることから、あらたなコミュニケーションツールとして導入する企業が増えています。
スマートフォンなら携帯電話回線とWi-Fiを利用できるため、無線機のようにつながる範囲が限定されるということがありません。また、無線機よりも小さくて軽いので、持ち運びに便利。音声会話だけでなく、文字や画像を使うこともできます。
スマホインカムならBuddycom(バディコム)
「Buddycom」(バディコム)はスマートフォンやタブレットにアプリをインストールするだけで使えるスマホインカムです。(お客様からよくある質問はこちら)
無線機と同様に簡単な操作で扱え、免許や資格不要で従来の無線機やトランシーバーのような使い方ができるほか、映像や文字、位置情報などを活用して1ランク上のコミュニケーションを実現してくれます。
特徴①:操作が簡単
Buddycomの操作方法は、通話ボタンを押しながら話すだけです。使い方がシンプルなので、誰でも簡単に、間違えずに操作できます。1対1の通話はもちろん、1対多の単方向のグループ通話や、自分が話しながら同時に他の人の会話を聞くことができる双方向のグループ通話も可能です。ユーザー数、グループ数に制限はありません。
特徴②:音声をテキスト化
音声は自動的にテキスト化されるので、聞き逃しや聞き間違いといった伝達ミスを防ぐことができます。テキスト化した会話はチャット画面に残るので、後から内容を確認することも可能。テキストデータの読み上げもできます。また、翻訳にも対応しているので、多国籍な現場でも情報共有がスムーズにできます。
特徴③:特定エリアのユーザーに話しかけられる
マップ上で相手のいる位置を確認しながら会話ができます。一定の位置にいるユーザと話したいときや、緊急時に現場の近くにいるメンバーに向けて発信することができます。
特徴④:映像配信ができる
音声だけでなく、現場の状況をライブ映像で共有することができます。音声やテキストだけでは伝えにくいことも、実際の映像を見ることでより正確に共有することができるでしょう。撮影した映像と通話内容は自動保存されるので、後から確認することが容易です。
このように多くの利点を持つBuddycomは、アナログ無線機からの移行を検討する企業から注目を集め、多くの業種で導入事例があります。Buddycomを利用することで、これまで無線機で行なってきたリアルタイムなコミュニケーションを、スマートフォンを使って実現することができます。
先述した通りBuddycomには音声通話だけでなく、ライブ映像の配信、音声のテキスト化、翻訳機能、マップ通話、メッセージの暗号化といった高い技術と多彩な機能があります。この技術と機能により、現場のコミュニケーションの質を向上させ、より円滑な環境を提供します。
ご利用はアプリケーションをインストールするだけなので、これまで無線機を利用するために必要だった登録申請や更新手続きといった煩雑な作業からも解放されます。機器の切り替えのご案内も行ないますので、お気軽にご相談・お問い合わせください。導入後のサポート体制もしっかりしています。まずは1ヶ月の無料トライアルをスタートしましょう!導入事例の一覧はこちら